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  家から人間が一人いなくなっても、現実は動いて行く。     もちろん、会社も取引先も待っていてはくれない。 私は、変わらない日常を続けなくてはならなかった。   時折、社内で聞こえてくる妻に対する噂話に耳を塞ぎながらも…。     当たり前と思っていたモノを失う。 それも、ある日突然…。 誰も自分の身に降り掛かるとは思ってはいない。 だから、頭上から突如浴びせられた現実を受け入れる事も出来ず、暫し硬直し拒絶しようとする。 だが、逃れる事は許されず、身一つで曝される。     私は、妻に何かしてあげられたのだろうか?     妻は、何を思っていたのだろう? なぜあの日、妻の姿を見ながら声を掛けなかったんだろう? 妻と最後に交わした言葉は、一体何だっただろう? 誰とも言葉を交わす事のない時間は、自問自答を繰り返す。 それに意味などないとしても…繰り返さずにはいられない。 答えがないから、尚更だ。
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