2/4
前へ
/100ページ
次へ
  そこは暗かった。 あの日、私の躰は水の中をゆっくりと底へ向かい沈んで行った様に思う。 無重力空間の様な水を緩やかに沈み、水の底に躰がそっと触れる。 触れた泥が煙りの様に舞い上がり、ゆっくりと私の上に積もり続けた。 私は、吸い込まれる様にズブズブと泥にのまれていった。 実際のところは知らない。 そう感じただけなのか、最後くらいは苦しくなくと、私自身が勝手に書き替えた記憶なんだろうか? 事実はわからない…。 ただ、冷たく重く暗い場所に自分の躰が横たわっている事だけは解っていた。 寒いのは苦手だった。 東北育ちだったが…寒いのは嫌いだった。 ここは… 寒くて… 暗くて… 冷たくて… 静かで… 重い…。 一人とはこんな事なのかもしれない。 私は、目を閉じたままそう思った。 閉じた瞼から染み込んでくる、闇と冷気。 私の終わり… 今頃、主人はどうしているだろう…? 両親はどうしているのだろう…? あの人は…私の死を知っているのだろうか? ゆっくり…ゆっくりと一人一人の顔を巡らせた… …ジジッ……ジ…… それは突然に始まった。 私の頭の奥に、テレビの砂嵐の様なモノが見え始めた… ジリジリ…ザッ…ザザッッ…
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加