山下 潤一

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「60番」 俺の囚人番号が呼ばれた。 その声は 冷たくて 罪人にはなんの情けもないという そんな声だった。 それでいい。 下手に優しくされると 罪なんて 忘れてしまいそうになるから。 その声は、吐き捨てるように言った。 「食事だ」 小さな小窓から あまり白くないご飯と 具のないスープと 少しの野菜と 小さな魚が それぞれ銀の食器に控え目に盛り付けられて 差し出された。 もう、そんな時間か。 俺は、ふうっとため息をついた。
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