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その夜バイトから帰ると、家には僕の小さいサイズの服を着た二人の少年と一匹の怪我をした小猫がいた。
「おい城戸、これどうやって使うんだ?」
猫田さんの手には救急箱から出された消毒液、しかし彼は使い方がわからないようだった。
「はぁ」
盛大な溜め息を吐き、僕は軽く子猫の手当てをし、少年たちを見た。
「膿んでないし、そんなに深い傷でもなかったんでしばらく安静にしてれば治ると思いますよ」
「よかった……」
兄猫らしい少年は安堵の表情を浮かべ、子猫の頭を撫でた。
「よし、では怪我が治るまでお前たちはここにいろ」
「……は?」
僕の顔はみるみる青ざめていく。
「餌の方は城戸が買ってくるから心配しなくていい」
「ちょっ……餌って……、その前にこのアパートはペット禁止なんですよ!?」
「ああ、静かにしてればバレないだろ」
楽天的過ぎる!
「ここの大家さん、普段は優しいですけど大の猫嫌いなんです!」
丁度その時チャイムが鳴った。
ぎこちない動きで玄関に出ると、予想通り大家さんがいた。
「何やら先程猫の声が聞こえたんだけど……気のせいかしら?」
「テ、テレビの音量が大きくて……」
「そう……、可愛らしい坊やたちね」
大家さんはさりげなく中を盗み見ていたらしい。
本当に侮れない人だ。
「……あたしの勘違いかしら、ごめんなさいね」
何とか大家さんは帰ってくれた。
しかし……これはまずい。
「本当に勘弁して下さい……」
「やだ」
「キャットフードなんか買ってきた日には、僕はここから追い出されてしまいます」
「何とかしろ」
「うぅ……」
それから兄弟猫には絶対に鳴いたりしないように念を押し、アパートから離れたスーパーなどでキャットフードを買うことになった。
また、猫田さんは今まで通り学校の皆から餌を献上されるのだった。
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