僕と猫田さん

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「……」 僕は今、地理の移動教室で本当にプリントを忘れて取りに来たところだった。 そして教室には、制服は同じものを着ているが確かに見慣れない誰かがそこにいた。 僕は意を決して後ろから見慣れない誰かの両肩を思いきり掴む。 「ふぎゃっ!?」 すると変な声を上げてその誰かは驚いた。 「ッ!?」 相当な驚きようにこちらも少し怯んだが、何とか堪え相手の顔を見た。 「……誰?」 やはり見たことのない生徒だ。 「あ……あぅ」 仕方ないのでとりあえず彼を椅子に座らせ、向き合うような形にして彼に質問した。 「君が餌泥棒?」 「……」 しかし彼は何も言わず、身を縮こませながら落ち着かない様子だった。 するとそこへ誰かが教室に入ってくる。 「それが餌泥棒か?」 「え……」 そこには僕らと同じ制服を着た猫田さんがいた。 「ん?」 猫田さんはしかめ面で入ってくると何かに気づいたような反応をした。 そして猫田さんは見慣れぬ誰かに近づき、じーっと至近距離で顔を覗き込む。 相手の方は冷や汗をだらだらと流していた。 すると猫田さんは驚きの一言を発した。 「お前猫だろ」 「え?」 よくわからない僕は猫田さんと見慣れぬ彼を交互に見る。 「こいつは俺と同じ人間に化ける猫だ」 「ぇえ!?」 「どういう理由で俺の餌を盗んだ?」 混乱する僕を置いて、猫田さんは話を進めた。 「……」 「どういう理由かって聞いてんだよ」 まるで脅しているようだ。 「……お、弟が怪我してて」 それから彼はぽつりぽつりと事情を話し始めた。 「餌を取りにいこうとしたら弟が意地悪なカラスにいじめられてて、そう遠くまで弟から離れる訳にもいかず、その時この学校を見つけたんです。餌はあなたに送られるものでたくさんだったので、誰もいない教室にこっそり忍び込んだんです。幸い私は人間に化けられましたし、制服は体育で着替えていったらしいものを拝借して盗んでいたんです」 「……」 なかなか訳ありな猫がやった犯行だったようだ。 「本当にすみません……」 「今日の夜、弟を連れてコイツの家に来い」 コイツと言われ、指を差されたのは言わずもがな僕だ。 「いいな」 「は……はい」 ああ……僕に拒否権はないんですね、猫田さん。
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