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「おい優七、今日の午後って魔法実習の授業だっけ」
昼休みが終わり教室へ戻る途中、安堂がそんなことを聞いた。
「あーうん、そうだね…そう」
曖昧に頷く優七に不安そうな安堂は続ける。
「だったら早く行かねぇとヤベーんじゃねぇか?」
「そうですね~、今日は草壁先生もくるようですし~」
あわてふためく野球をしていた生徒達。しかし優七だけは何故か冷静に…
「あー僕は一回教室戻るよ、皆は先行ってて」
「は、何かあるのか?草壁に殺されるぞ……まぁいいか、早くこいよなっ」
そう言って安堂達は先に指定された場所へ行ってしまった。
残った優七はため息をつく。
「絶対、祈梨寝てるもん、授業サボるために…」
優七は何かを察するように教室に向かった。
二年C組、ここが優七の教室。
優七が教室へ入ると案の定、祈梨はまだ夢の世界にいた。
祈梨の席の近くまで行くと、そっと彼女の様子を見る。
何十年と生きていることを忘れさせるようなあどけない寝顔。
優七が守りたいと思う存在はそこにあった。
「祈梨ぃー朝だよ起きて、学校に遅れるよ」
そう言ってそっと揺する。
しかし祈梨はピクリともしない。そんな彼女を見て優七は次の手を決行した。
「血、あげるから起きてー」
普通の人が聞いたら異常に思うだろうが、この二人にはお互い通じる言葉だった。
血。
それは吸血鬼である祈梨にとって必要不可欠な代物。
吸血。
人間でいう食事に値する行為。
それで祈梨を釣ったのだ。
優七のその言葉に彼女の肩がピクリと反応する。
最初から起きていたようだ。
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