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階段に備え付けられた正方形の小窓は階段四つ分を段差に高さを変えて、朝の光を注ぎ込んでいる。
新しい生活。
ここにあるのに、ここで生きているのに。
それなのに。
流は傷付き泣くのに、自分は浩太に逢いたい。
ただ、逢いたいだけなのだ。
無責任に優しいよりも自分のほうがひどい。
何でも、与えてくれる流。
幸せも安心感も女としての価値も、全て与えてくれているのに。
流は多分、私の携帯電話を見たのだ。
理香とのやり取りを。
それとも、クローゼットの奥で息をする浩太との思い出に気付いてしまったのだろうか。
いつもの階段は途方も無く長く感じた。
この家に疲れたと一瞬思い、思い直して空の部屋に入り込む。
空を愛してくれる流。
私を愛してくれる流。
床に座ったまま、流が寝室に入っていくのを待つ。
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