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布団から這い出て、キッチンに下りた。冷蔵庫の前で少しだけ考えて、涙を拭いてからビールを取り出す。冷えたビールは、たまらなく美味しい。
でも、とラップのかかった素麺を水道の水で解しながら思う、でもやっぱり、昼間のビールは寂しくなる。
素麺を食べていると理香から電話が来た。
「今日、夜出れる? 飲みに行こうよ、イベントあるし。」
「うーん、行こうかな。」
「うん、久しぶりに。気晴らししなさいよ。」
やっぱりさばさばと物を言って、電話を切った。
久しぶりに足を踏み入れる場所。
空気は懐かしいのに、自分は随分、歳をとったのだと思ってしまうのは、周りの人があきらかにまだ若く、元気があるからだ。
やけに落ち着き払った、理香と自分。
音には、特別乗ることも無くジントニックばかりを飲んでいる。
話しかけてくる男は、あきらかに年下でそれが何故だかすんなりと入り込んでくる。遊びにしかならない男の子。次々と変わる音、心臓に染み入るレゲエ。久しぶりに聴いても尚、やっぱり好きだと感じる。それだけで、幸せさえ感じる。若いドレッドの男の子と一緒に理香は、楽しそうにフロアの中央に入っていく。地黒の綺麗な女の子。
流が居ないこの場所で私は、自分を守らなければならない。
母親だから。妻だから。
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