Ⅴ 初めての二人きり

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『ごめんなさい、今日はいつもの呑み会じゃないの。』 えっ?と訝しげな顔をすると、 『大勢で騒ぐ気分じゃなくて。で、来てもらったんだけど、迷惑だったかな?』 『迷惑だなんて…凄く嬉しいですよ。』 『彼女がいたら誤解されちゃうかな?』 『知っているでしょう、僕に彼女がいないことを。』 少しおどけて言うと、やっと彼女は柔らかく微笑んだ。 『そうだったわね。さ、料理を食べましょうよ。ここ、お勧めなのよ。』 地中海料理の店で、ワインもそれなりに揃っている。適当に白ワインを頼んでみたが、値段の割にまずまずの味だった。料理もおいしく、少し酔っ払った僕は自分のことを延々と面白おかしく喋り捲った。仕事のこと、トラブルのこと、妹のこと、両親のこと。彼女は自分のことを何も話さなかったが、僕の話を笑いながら聞いていた。 『小食かと思ったら、結構食べるんですね。』 見ていても気持ちのいい食べっぷりだった。 『いったい私のどこを見て小食だなんて思ったの?』 笑い転げながらそういう彼女は本当に楽しそうだ。 『飲むし、食べるから、エンゲル係数高いわよ。』 『なら、奢るって言わないことにしておきます。』 『えーっ、て言いたいところだけど、今回は私が誘ったから私の奢りよ。』
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