0人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
『ごめんなさい、今日はいつもの呑み会じゃないの。』
えっ?と訝しげな顔をすると、
『大勢で騒ぐ気分じゃなくて。で、来てもらったんだけど、迷惑だったかな?』
『迷惑だなんて…凄く嬉しいですよ。』
『彼女がいたら誤解されちゃうかな?』
『知っているでしょう、僕に彼女がいないことを。』
少しおどけて言うと、やっと彼女は柔らかく微笑んだ。
『そうだったわね。さ、料理を食べましょうよ。ここ、お勧めなのよ。』
地中海料理の店で、ワインもそれなりに揃っている。適当に白ワインを頼んでみたが、値段の割にまずまずの味だった。料理もおいしく、少し酔っ払った僕は自分のことを延々と面白おかしく喋り捲った。仕事のこと、トラブルのこと、妹のこと、両親のこと。彼女は自分のことを何も話さなかったが、僕の話を笑いながら聞いていた。
『小食かと思ったら、結構食べるんですね。』
見ていても気持ちのいい食べっぷりだった。
『いったい私のどこを見て小食だなんて思ったの?』
笑い転げながらそういう彼女は本当に楽しそうだ。
『飲むし、食べるから、エンゲル係数高いわよ。』
『なら、奢るって言わないことにしておきます。』
『えーっ、て言いたいところだけど、今回は私が誘ったから私の奢りよ。』
最初のコメントを投稿しよう!