Ⅴ 初めての二人きり

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食事の後は店を数件梯子して、さらに呑んだが、彼女はと言うと上気してほんのり赤くなった頬以外はいつもと変わらない。眠くなったからと言う理由でお開きになったのは朝が近い4時だった。 (明日仕事が休みでよかったな。) 自宅に帰ると、服も脱がずにそのまま倒れこむように寝ていた。 それから僕はちょくちょく彼女から食事兼アルコールのお誘いを受けるようになった。食べ物の好みも似ていて、アルコールもいける口の僕はぴったりだったらしい。待ち合わせの店には必ず彼女の方が先に来ているのだが、あるとき全面ガラス張りの店の外から彼女見たら、深刻な顔で下を向いていて思わず、その理由を聞きたくなってしまった。けれど、僕には聞けなかった。僕を見つけたとたん、彼女が明るい顔で僕に向かって手を上げているのは、僕に話したくないからだと判っていたからだ。
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