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そのときは、珍しく先客がいた。
『こんにちわ~っ。』
勢い良く戸を開けると、カウンター席にいた髪の長い女性が僕の方を振り返った。
『いらっしゃい。』
おばちゃんといつもどおり挨拶をして、僕はカウンター席にに腰掛けた。さすがに初対面で隣の席に座ると言う暴挙に出れるわけもなく、髪の長い彼女から3つほど離れた席に腰掛けた。
『まず何かお勧めください。』
『んー、今日は、これをまず飲んで見ないか?』
おばちゃんのお勧めは、まず外れがない。きりりと冷えた日本酒に口をつけると、ふわっと華やかな香りが口の中で広がり、すーっと喉を降りていく。
(くーっ、うまいよな。)
あまり専門家のような評は出来ないが、それでも、おいしいものはおいしいと思う。
ひとしきりおばちゃんと雑談を交わしながら日本酒を3杯飲んでしまうと、勘定を済ませて、店を後にした。きれいな女性が一人で飲んでいるというのは、ちょっと気になったが、声をかけるほど親しくもなかったので、その日はそれで終わった。
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