Ⅰ日本酒専門店

3/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
そのときは、珍しく先客がいた。 『こんにちわ~っ。』 勢い良く戸を開けると、カウンター席にいた髪の長い女性が僕の方を振り返った。 『いらっしゃい。』 おばちゃんといつもどおり挨拶をして、僕はカウンター席にに腰掛けた。さすがに初対面で隣の席に座ると言う暴挙に出れるわけもなく、髪の長い彼女から3つほど離れた席に腰掛けた。 『まず何かお勧めください。』 『んー、今日は、これをまず飲んで見ないか?』 おばちゃんのお勧めは、まず外れがない。きりりと冷えた日本酒に口をつけると、ふわっと華やかな香りが口の中で広がり、すーっと喉を降りていく。 (くーっ、うまいよな。) あまり専門家のような評は出来ないが、それでも、おいしいものはおいしいと思う。 ひとしきりおばちゃんと雑談を交わしながら日本酒を3杯飲んでしまうと、勘定を済ませて、店を後にした。きれいな女性が一人で飲んでいるというのは、ちょっと気になったが、声をかけるほど親しくもなかったので、その日はそれで終わった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加