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ⅩⅡ進まぬ離婚
『最近、食欲ないの?』彼女の表情に少し疲れたような疲労感が漂っている。
『少し…ね。元気だけが私の取り柄なのに。』
『無理しなくていいよ。家のことは適当で。僕も家事はするんだから。それに散らかっていても、死にはしないし。』
『そうね。』
一緒に暮し始めて二ヵ月がたとうとしていた。あの嵐のような彼女の母親の襲撃からしばらくは静かだった。何も解決はしていないが…。
『その後会社の方はどうなの?』
『一度注意を受けた後は何も…。』
早く離婚が成立してくれれば何も問題ないのだが…。
『そういえば、離婚調停の申請は準備進んでいる?』
『来週に一回目の調停が決まったわ。うまくいくといいのだけど。』
不安な顔をする彼女を抱き締めてきっと大丈夫だよ、と耳元で囁いた。僕に勝算はなかったが、少しでも彼女の不安を和らげてあげたかったから。
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