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裁判所からの内容証明郵便は、彼女の夫から僕に対する損害賠償請求だった。また、彼女の離婚調停打ち切りは、夫のほうが全く離婚する気がないことにより、これ以上の調停をしても意味がないと判断されたようだった。
彼女の気持ちはもう、自分にはないのに、それでも離婚する気がないというのは、どういうふうに理解したらよいのか、皆目僕にはわからなかった。さらに損害賠償請求とは…。僕にお金を払わせたら気が済むのだろうか?
気持ちは、気持ちは…ずっと同じじゃない。膨らんだり、萎んだりする。時間がたてば、彼女の気持ちがまた自分に戻ると信じているのだろうか。
『私の気持ちがあの人に戻ることは永遠にないのに。』
僕の気持ちを見透かしたように、彼女が呟いた。『あの人と結婚したとき、ずっと添い遂げようと思った。けれどダメだった…。だから正直、この今の気持ちが、この思いが永遠に続くかは自信がないの。』
哀しげな彼女の顔。そこに見え隠れする不安。ずっと一緒にいたいと話しながらも、そうできないかもしれないという不安を、彼女は心の中に抱えていたのだ。
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