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親父には“未来”というものが視えるという。だからなのか、よくオレや妹のシューンに忠告をしてくれた。
その力はオレには受け継がれなかったが、シューンに受け継がれ、親父は悲しそうな目をしてたっけ。
あぁ、ちくしょ。話が逸れた。
とにかくだ。あの頃のオレはあいつらと同じ小さな子供で、それに反論できるような達者な口は持ち合わせていなくて、いつも隠れて泣いていた。シューンは身体の事もあり、その頃からよく家に閉じこもっていた。
誰にも見つからないように、オレは村はずれで泣いていたんだ。
「なんで、泣いていますの?」
ある日、オレは泣いている所を見つけられた。それも、女に。
現れたのは金色の髪を肩まで伸ばし、ルビー色の瞳(め)を持った、オレと背丈も歳も変わらない女の子。
正直言って、恥ずかしかった。泣いてるところを見られたなんて、男のプライドが許さない。
しかもこいつは村長の娘だ。オレ達家族を疎んじてた奴の家族だって事で余計にオレのプライドが傷ついた。
必死に目をこすって、顔を逸らす。
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