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「泣いてねえよ!」
「泣いていたじゃありませんの。確かに見ましたわ」
「うるせぇ! 女はあっち行ってろ!」
「まあ! 女だからってバカにいたしますの?! それではあなた達の悪口を言っている人達と変わりありませんわ!」
「女とハーフは違うんだよ!」
「違いませんわ! おんなじヒトじゃありませんの!」
“おんなじヒト”
同年代で初めて言われた言葉に、オレはもう一度振り返った。
「……え?」
「なんですの。何か文句がありますの?」
「……ない、けど。でもお前、そんな事言っていいのか?」
オレの言葉に、そいつは怒った顔のまま首を傾げてみせる。
「何がですの? 私(わたくし)をあの悪口ばかり言う子達といっしょにしないでくださいませ!」
「いや、そうじゃなくて。その……お前の父ちゃん……」
「あんな人、そんちょー失格ですわ! あなた達の悪口ばかり言うんですもの!」
ぷい、とそっぽを向かれた。どうやら村長は嫌いなんだなってのがわかる。
むしろ、嫌いだからこそオレにあんな事が言えたのだろう。
初めて言われた色々な言葉が嬉しくて、素直に頭を下げる気になった。
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