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レンガ造りの壁とは違う異様さを放つ黒い金属質な扉がある。
ここを抜ければ武器庫だ。
扉の横に備え付けられた生体認証で網膜と指紋、声帯をチェックして扉を開いた。
重い扉が軋む音が響いて、少しづつ中が見えてくる。
レベル1~3まで区切られた区画で構成される武器庫は、自分の好きな武器をいつでも持ち出せるようになっている。
その分管理は厳しくなっているのだが、好きな武器がいつでも借りられるのはかなり便利だ。
レベル1の区画には純鉄の刀剣類、純銀の刀剣類が配置され、レベル2には重火器が配置、レベル3には何があるのかまだ知らない。
私は太腿に巻きつけてあるベルトを外して純銀の小ナイフをきっちりと収納していく。
今回の相手なら武器は必要ないけど、油断してたら殺られかねないからね。
重火器なんて持って行く時は、相当な強さを持った幽霊と戦う時か借主が馬鹿なだけ。
自分の能力を活かしきれてないのがまるわかりだし。
「クロスさん?」
気配が無いから反応が遅れたが、後ろには武器開発班の主任である『アリスト・ジュネル』が立っていた。
どうして気配を殺しながら歩いているのか不思議でならない。
クロス「おはようです♪」
久しぶりに会った気がするけど、アリストはよく自室に籠もりっきりになっているから前はいつ会ったのか覚えていない。
「その喋り方を止めないと今度は本当にキレますよ?」
「この喋り方が1番私っぽいと思うんですけど…」
拗ねる様に口を尖らせる私に、呆れた視線を向ける彼。これが彼と私のいつもの会話だ。
彼は私が本音を話せる数少ない『友人』の一人。
初対面から「二重人格のフリですか?」って聞いてくる人が友人だとは言い切りにくいが、私は彼を友人だと思っている。
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