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朝―――古小屋から数百メートル離れた国道沿いには、幾つもの赤いサイレンと黄色いテープが乱雑に絡んでいた。
ザザ……こちら301号車、遺体は検死に送った。どうやらハンターの出番らしい。連絡は入れたから早く戻って来いよ、ポーカーの続きをしようぜ?
一台のパトカーにそう連絡が入ったが、返事は無い。
青い制服を着た捜査官が野次馬の様に集まっている。
あちらこちらから噂する声が聞いて取れた。
あれがハンターだってよ…
あいつらが出てくる事件は、必ず幽霊が犯人なんだって…
俺達は早く帰れて良いけど、まさか子供が来るなんてなぁ…
捜査官の話を無視しながら黙々と現場検証を済ませる少女がいる。
金髪の長い髪を所々三つ編にし、まるで機械の様に仕事をこなしていく。
慣れた手つきで遺留品と思われるジーンズを持ち上げると、透明なビニールに入れて密封した。
160に満たない身長を最大限に活かして、傍に生えている樹木を小刻みに飛び跳ねながら見ている姿は、まるで小動物を彷彿とさせる。
辺りで見ている捜査官も彼女の可愛さと幼稚ぶりに和みつつ、ハンターとは何ぞやと言う問いの答えを必死に探していた。
「捜査完了しましたです!!」
猫の鳴き声にも似た声で捜査官達に敬礼すると、それにつられて「ごくろうさまです」と敬礼を返す。
「それでは私は退散しますので!! 後はよろしくです!」
小さな顔で満面の笑みを作ると、黒のジャガーに乗り込んでしまった。
周りからは、運転席に乗り込んだ少女を心配する声が上がったが、気にすることなくエンジンを掛ける。
キュキュキュ…ボゥン!!
爆発的な音で点火したエンジンは、低く力強いアイドリング音を響かせながら車体を揺らした。
左の運転席の窓が降りて行く。
「仕事中にポーカーしてる事なら上官に言っておくんで心配しなくて大丈夫です~」
まるで捨て台詞を吐くように少女の口から飛び出した言葉に、捜査官は何か叫んでいたが、その時には黒い車体が遙か彼方に見えている頃だった。
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