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幽霊には種類がある。
物や土地、人に憑りつく地縛霊や生きている人間が睡眠、気絶、昏睡状態等の無意識下で体とは別の場所に現れる生き霊。
種類を挙げればキリがない。
しかし、『憎しみ』『悲しみ』『怒り』『未練』によって、自分が死んでしまったと自覚せずにいる霊もいる。
いや、他の霊も自分が死んでいると自覚する事は少ないが、浮世に未練を残したまま死んでゆく人間は決して自分が死んでいると認めない。
やり残したことがあるから、まだ死ねない。
それは、他人を想う暖かい気持ちであったり、時には冷徹な感情でもある。
それでも、幽霊になってしまえば関係は無い。
幽霊になった瞬間に襲ってくる殺人衝動が、想っている人に向けられるのだから。
ある殺人鬼の話をしよう。
彼は1966~1970年にかけて、自白しただけで45名の殺人を犯した。
逮捕された彼を待っていたのは、法の裁きでは無い。
正義を語った暴力。
しかし、彼はそれを完全に受け入れていた。
自分のした事で捕まれば、どんな裁きでも受ける決心はついていたのだから。
そして事件は起こった。
彼の妻が、友人の恋人により密告され、共犯の容疑がかけられたのだ。
連邦保安局は自白を迫ったが、彼女は共犯では無いと申し立てた。
殺人犯の妻が言った事を誰が信じる?
偏見や差別によって造られた時代に、彼女を庇う者はいなかった。
最初は尋問から始まったのが、日に日にエスカレートしていき、拷問へと変わった。
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