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彼は、妻は無関係だと叫び続けた。
連邦保安局にしてみれば、犯人が捕まったのだから事件は解決したも同然だったのだが、マスコミや世間は終わりにしようとしなかった。
無骨なコンクリートがさらけ出されたままの独房で彼は待った。
彼女が嘘でもいいから自白してくれるのを。
これ以上、彼女の悲鳴は聞きたくない。
毎日毎日、耳を塞ぎながら耐えたある日の朝。
叫び声が止んでいた。
彼女は拷問によるショック死により、この世を去った。
その日の夜、彼は自殺を図り死亡。
連邦保安局は、夫による無理心中と公表した。
生前の彼の趣味は人殺し。
ただ目についた人を殺す通り魔だった彼が、最後に想った人は妻ではなかった。
妻を売った友人と恋人。
半年後、二人はバラバラの惨殺死体で発見されたが、事件は迷宮入り、その後の捜査の発展も無く時効となっている。
自殺する前まで、彼の耳に残っていたのは、妻の恐怖に満ちた叫び声だった。
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