93人が本棚に入れています
本棚に追加
『G.C』―――スイス支部
200坪を超える広大な敷地にレンガ造りの建物が聳え立っている。
メインストリートの真っただ中に門を構え、常に人の出入りが盛んなようだ。
古びた外観からは想像出来ないほど、内部は入り組んでおり、床は贅沢にも大理石を使用している。
そこら中から靴と大理石の触れあう音が漏れだし、常に辺りを喧噪が支配している。
そして、彼女もまたコツコツと音を響かせながら上司の部屋へと向かっているのであった。
「おはようございますクロスさん!!」
「おはようです~♪」
金髪を靡かせ、悠々と歩き続けながらいつも通りに挨拶を返す。
今、私が向かっているのは支部長室だ。
なんだか今日の事件で話があるらしいけど、今の支部長はあんまり好きじゃない。
コンコン……
「失礼するです。」
茶色の木製扉をノックして、相手の返事が来る前に中に入った。
中は必要な物しか無い部屋、つまり書類と机と椅子と棚だけがびっしりと並んでいる。
なるべく早く済ませよう。
そう心に決めて支部長の机の前に立った。
「呪われた娘……来るのが遅すぎやしないか?」
眼鏡を上げながら支部長の顔が夕日に照らされて見える。
青い瞳と嫌味っぽく引き上がった目、要件以外を口にしない性格、嫌味から産まれた様な人間だ。
呪われた娘―――コイツにしか呼ばれない名なのだが、コイツに呼ばれるのが異様にムカつく。
最初のコメントを投稿しよう!