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支部長の怪訝な顔。
今思い出しても笑えてくる。
少しはやり返してやらなきゃ私が我慢しきれない。
私は長い廊下を挨拶しながら、少しづつ気持ちを落ち着けていく。
みんなには親の命を奪って生まれたなんて知られたくないし、知られたらここでも孤立してしまう。
とりあえず、私のオフィスに戻って書類に目を通さなくちゃ。
私は『CHROSS』と表札の掛った扉をゆっくりと引いて、中に体を滑り込ませた。
桃の香りが漂ってくる。
私のお気に入りの御香の独特の香りだ。この香りを嗅ぐたびに私がまだ生きていると実感する。不思議な香りの御香だ。
ピンクを基調とした部屋の一角にある古ぼけた木目の机に腰掛けながら書類に目を通して行く。
今回の任務は『連続バラバラ殺人』の犯人を抹殺すること。
場所は分かっている。
すぐに実行に移して支部長の驚く顔を拝見するとしよう。
思わず想像して頬が緩む。
私は武器庫から必要な道具を取りに行く為に、足早に部屋を後にして廊下を突き進んだ。
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