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シュウヤ、杉山シュウヤ。
これも、なんだか懐かしい感じ。
でも……思い出せない。
ここにいて、手を握っていてくれた。
私が眠っているにも関わらず。
きっと、彼は私に近しい人なんだろう。
「そうだ、もう一つ」
「どうして、泣いているの?」
私は、一番疑問に思っていたことを聞いてみた。
他にいくらでも聞きたいことはある。
ここはどこ?
私はどうしてここにいるの?
でも、まずは彼の涙の理由が知りたかった。
そして、彼の涙を止めたかった。
放っておけば、そのまま消えてしまいそうだったから。
「あ、くそ、情けないな」
恥ずかしそうに目元を拭い、話だした。
「ハルカが、起きてくれたから」
まっすぐ、私の目を見つめて。
「もう、3ヶ月も眠ったままだった」
綺麗な目だ、私はそう思った。
「いいんだ、全て忘れていても」
綺麗と純粋は、同じことなんだろうか。
「それだけで、いいんだ」
時計がちょうど6時を告げている。
夕日を切り裂いて、ドアをノックする音が聞こえた。
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