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ハルカが、目を覚ました。
でも……それだけじゃ到底足りない。
僕の名前を呼んでほしい。
また僕に笑いかけてほしい。
僕の気も知らずに、彼女は全てを忘れていた。
何か、いろいろ質問をされた気がする。
内容なんて覚えちゃいない。
覚悟はできていると思っていた。
彼女の中は、何もなくなっているって。
どこかでは、温い幻想を捨てきれていなかったのかも知れない。
事実、自己満足の毎日で彼女を救えたように思っていた。
悲しみは、埋めることは意外と簡単なのだ。
だって、もともとそこには何もないから。
現実は、いつでも現実。
どんな瞬間でも、一つの答えしか持っていない。
大事な人は、今抜け殻でしかないのか。
記憶の中の笑顔の人。
そんな彼女はどこへ行った?
僕は、所詮他人に過ぎなかったのか。
行き場のない幻想は、渦巻く空虚に溶けて消えた。
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