1-1

2/2
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
窓から夕日が差すころ、私は目覚めた。 見慣れない天井に、無機質な電灯、それに嫌味な程の白い空間。 ここは、どこ? 戸惑い、考える。 何も、思い出せない。 あの夢の景色が脳に張り付いているだけ。 今目に写る物は全て意味を成していないみたいだ。 なんだろう、ここはどこ? 思い出せない。 怖いよ。 その時、視界の端に何かが動くのが見えた。 人? 誰だろう。男の子? 彼は、どうやら眠っていたらしい。 私に気付くと、子供のように顔を崩してみせた。 本当に幸せそうな、それでいて人を安心させるような笑顔。 「ハルカ、気がついたんだ」 優しく、声をかけてきた。 そこでようやく、彼の手が私の手を包んでいるのを見つけた。 目は泣きはらしたのか、真っ赤になっている。 私は混乱した。 ハルカ? 誰のこと? あなたは、どうして泣いているの? 誰のために? どうして、ここにいるの? どうして、私の手を握っているの? そもそも、あなたは誰? こんなこと、聞いてもいいんだろうか。 知りたい。 私は、どうしてここにいるのか。 でも、きっと彼に迷惑をかけてしまうだろう。 様々な思いが交錯した。 しかし、私の中に何もないと言う恐怖が打ち勝った。 「あなたは、誰?」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!