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真っ白な部屋。 清潔の証とはよく言うが、本当なんだろうか。 案外、白は悲しみの色なのかもしれない。 今、目の前の男の子は悲しげな顔をしている。 彼の悲しみが、限度を超えて染みだしているよう。 部屋の白さが、深みを増したような気がした。 私も、いずれそれに飲み込まれてしまうのか? 「ごめんなさい、こんなことを聞いて」 申し訳ないとは感じていた。 しかし、膨れ上がる恐怖を抑えられなかった。 「何も、思い出せないの」 「怖いの、何か知っていたら教えて」 彼は、しばらく呆然としていた。 少しすると、頭を23度振り、座り直した。 長めだが整った髪が揺れる。 微笑んだ瞳の奥は、色が抜け落ちていた。 「名前は覚えてる?」 ナースコールのボタンを押しながら、私にそう聞いた。 さっきのハルカと言うのは、私のことだろうか。 何か懐かしい、呼ばれ慣れた気はする。 しかし、確信には至らない。 「わからないわ」 「佐々木ハルカ」 「君の名前だよ」 優しく、元の笑顔に戻って言った。 その裏ではまだ悲しみが漂っているのが見てとれたが。 私の名前は、ハルカ。 ハルカと言うんだ。 噛み締めるようにつぶやいてみる。 ふと、次の疑問にぶつかる。 「あなたは?」 一層、部屋が白くなった気がした。 「僕は、杉山シュウヤ」 「君の幼なじみ、かな」 彼は、そう告げた。
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