73人が本棚に入れています
本棚に追加
………どうしたら、いいのだろうか
被ったフード越し、己を見据える勇者達にこころの中で困惑する。
それぞれがきつく握った剣、あるいは杖の柄。白くなるまで力の入った手。
ぎらぎらと輝く、強い眼差し。無理矢理吊り上げる唇。それは手負いの獣が浮かべる警戒と強がり。
どうしよう
だって、『やっと見付けた』のに………
どうして怯える?魔力は消してるし、翼も閉まってるし、魔族の皆だっておとなしくしたし…………………嗚呼、顔、隠しているからかな?
うん、多分そのせいだ
思い、決行。視界を遮るフードに手を掛けて一気に払う。
ぱさり。空気を含んだ軽い音と共にあらわになった真正面、見張る深い紺色の瞳に己が瞳を合わせた。
…………これで、恐がらないでくれる…………?
『今度こそ』一緒にいてくれる……………?
なかば懇願混じりの眼差しを、わかってくれるかはわからないけれども、せめてあなたたちを害することはしないということだけは、理解して欲しい。
けれど、
……信じて、くれるのだろうか?
彼らにとって最大の『敵』である自分の言葉を。
不安に怯える。なによりもたいせつな『彼』だからこそ。
思い、否定する。……いけない。弱気になって言い募っても、それは反って不信感を煽ってしまう。
………大丈夫、ちゃんと、ずっと考えて来たんだから。
あとは、震えそうになる声を、きちんと押し出せばいい。
警戒を解こうとしない『彼ら』に、出来るだけ優しく見えるように唇をゆっくりと綻ばせた。
最初のコメントを投稿しよう!