255人が本棚に入れています
本棚に追加
★
翌日、健と祐は鏡教授の部屋に来ていた。
「昨日は有難う御座いました」
深々と頭を下げる祐に、鏡教授は無言で首を横に振る。
「アナタがお礼を言う事ではないわ。それより、アナタは慌てた様子が無かったけど?」
「鏡教授ほどではないですよ。内心は目の前の光景に慌てていました」
祐に微笑み掛ける彼女に、祐も笑顔で返した。俺は二人の様子を横目で見ていたが、
「―――怖っ!?」
と、互いに感情が見ずに恐ろしかった。
鏡教授はこの大学の建築科の教授。学生の間では【変人】として有名な教授は、見た目が若く見える彼女はモデルのように綺麗で、背も高く男性的な雰囲気も持ち合わせた中性的な人だった。
そのせいか、男女ともに好意を抱かれるけれど、彼女に1度でも関わると言動に頭を悩まされる。
彼女に関する昔話で大学のクラスメートの告白に徹底的に嫌いな部分を語り「だから無理」と、フォローも無しに言い放ったそうだ。
そんな彼女を相手に、祐は対等に渡りあっているように見えた。
「それで要件は?」
鏡教授に言われ、健は話を切り出した。
・・・・・・要件は2つ。
『あ、それは昨日のコトがあって鏡教授の呼び出した要件を聞いていなかったから。それと・・・』
言葉を濁し、健が祐を見ると祐が続ける。
「昨日の件で1つ聞きたい事があって」
「聞きたい事は、何?」
祐の言葉に彼女は興味を持った様に聞く。
最初のコメントを投稿しよう!