255人が本棚に入れています
本棚に追加
映画部部室の扉を前に俺等は立つ。
『ここに何の用?』
「ちょっと探し物」
そう言って祐が扉に手をかけたが、扉には鍵がかかって開かない。
『開いてないね』
「そうだね」
『どうするの?優呼ぶ』
俺は視線を逸らし外を見ながら話すと、祐から返答がなく視線を向けて驚いた。
「あ、開いた」
『開いた、じゃねぇよ!?』
ドラマでも見なくなった針金での鍵開け。それを今、祐は俺の目の前でやってのけた。
「まさか開くとは」
『えっ、ミラクル。本気で開けても、まぐれで開けても両方スゲー』
叫ぶ俺を完全スルーして祐はさっさと中へと入る。
『・・・・・』
「何してるの、手伝って」
突っ込みの1つでも言えよ、と俺は心の中でぼやきながら中へ入った。
中に入ると映画部というだけあって映画の機器や雑誌、DVDとがひしめきあっていた。
『さすが映画部』
俺が関心していると祐は棚の本を片っ端から確認していた。
『何を探しているの 』
「台本、またはネタ帳」
『そんなの探して何するの?』
俺の言葉に祐は開きかけた口を閉じた。
「まぁ、これは推測だから確証が持てたら言うよ」
『そう、別にいいけど』
言葉が途切れ、俺と祐は捜索に専念した。けれど、祐が探している物は見つからなかったらしい。
小山にされた台本を前に祐は溜め息を零した。
「台本の中には無し」
『二十冊くらいはあるけどダメだったの』
「うん、ネタ帳はまったくみつからないから各自で持ってるのかも」
俺の言葉に祐は頷き答えると、机に崩れ落ちた。そんな祐に気にしないようにしていたことを聞こうとした。
『祐はこんな所調べて・・・、あの件のどんな真相を見つけようとしてるの』
「・・・・・」
俺が何を言おうとしているのか祐には分かったのだろう、無言で返答をする。
『祐の行動はどちらか1人が・・・・・・』
そこまで言って俺は口を閉じた。何だか虚しい、祐がこんな事が悲しくて仕方ない。俺はゆっくりと溜め息をつき目を閉じる、祐は何も言わずに扉とは反対にある窓から外を眺めた。
時間にしたら数分だろうが、長い時間が流れた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!