255人が本棚に入れています
本棚に追加
夜、大学の屋上。
吐く息が真っ白に染まるなか、僕と彼は立つ。僕は彼を、彼は僕を真っ直ぐに見つめた。
「ねえ・・・」
『なに?』
「そんなに見つめられたら気持ち悪い」
彼の言葉に僕はガックリと肩を落とす。
残っている人も少ない夜の、しかも大学の屋上には満月から舞い降りる光しかなく、お互いの表情なんて見えないのにワザとらしく彼は言う。
大げさに肩を落としたから彼に僕の気持ちは伝わっただろう。
「悪かった・・・。愛の告白ならOKだ」
うん、素晴らしいくらいに伝わっていない。満月、ちゃんと照らして。
『違うから、君には愛なんてないから。ちなみに友情は今ので消えたから』
「で、要件は?」
彼は絶妙なタイミングでそう聞いてきた。
イラッ、という文字が頭を通り過ぎる。けれど、堪えて話しを進めるため僕は口を開いた。
『犯人は君だったんだね・・・』
ゆっくりと、そしてはっきりと告げる。
「何の?」
なのに、なのに彼は首を傾げ聞き返してきた。あまりの彼の態度に僕は
『な、何って』
ちょっと慌てた。
ここまで平然とされると僕の勘違いかと思ってしまいそうになる。
『僕の周りで起きた事件だよ』
叫び声に近い声を出しながら彼に言い放つ。これは間違いないはずだから。
「あの、全部犯人見つかってるよ」
『・・・・・』
「なにで呼び出されたかと思ったら、悲しいよ」
泣き真似までする彼に、僕は本気で睨みつけた。
「おぉ、怖い」
はぐらかすように笑う彼に僕は睨みつけたまま言った。
『そうやって無害なフリしてみんなを騙していたんだね』
「・・・・・」
彼の顔から表情が消える。それが彼の本当の姿なのかもしれない。
ココからが勝負、のはずなのに彼はまた笑顔に戻った。
『な、なに』
「可笑しい事を言うからさ。今騙してる奴がそんなこと言うからさ」
『なっ!?』
驚きに言葉が出てこない。
そんな僕に彼は溜め息まじり続けた。
「女性が僕って言うな。最初の告白OKだって言った俺がホモみたいだろ」
『・・・別に良いじゃん。私が僕って言ったって』
「普段使ってないだろ、何の影響だよ。わざわざ呼び出してまで」
『てへへ』
笑う僕=私に、彼はかるくは頭を抱えた。
最初のコメントを投稿しよう!