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「帰る」
笑う僕=私に背を向ける彼は出口に行こうとする。
それに、私は笑顔をやめた。
『そう言って逃げるの』
その言葉に彼の足が止まる。
振り返らない彼に私は言葉を続けた。
『犯人の件、まだ答えを聞いてないよ!』
「・・・・・はぁ」
私の言葉に彼はゆっくりと振り返った。そして真っ直ぐに私を見つめる。
「何、まだゴッコ続けるの?」
『僕は本気で言ってるんだ!』
真っ直ぐに視線を返して私は言い返す。すると、また彼の顔から表情が消えた。
『確かに全部と言ったのは大袈裟かもしれない。けれど君が意図的、又は引き金になっている事件がある。何個もね』
それを聞き、彼は笑い声を上げる。けれど今度はふざけた雰囲気はなかった。
「俺が黒幕ってこと?おもしろい」
『・・・・・』
「夜は長い、時間の許す限り聞いてやるから、お前の推理を聞こうか」
時計を確認すると彼はゆっくりと私に近づく。
いつもと違う彼の様子に私は後退しそうになる足を必死で堪えた。
そして、二人の顔が互いに確認出来る位置まで来ると彼は足を止めた。
「さぁ、はじめようか」
見つめ合う二人。
『・・・・・』
「・・・・・」
『・・・・・』
そして私は彼を見つめると、ゆっくりと口を開いた。
『本当に長くなりそうだから飲み物とか買ってきていい?』
「おい!?」
夜の冷たい風が私と彼を通り過ぎる。
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