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まだ新しい建築科講師棟は、大学の卒業生によって設計された。
世界的な建築家となった設計者は同じ大学で建築を学ぶ者として有名で、この建物自体も彼の作風を象徴した無駄を徹底的に排除され派手さはないが機能美をしっかりと感じられる作品である。
丁度、健と祐が待っている階は隣の棟の屋上へ出られる扉があり、扉を出ると高さ2m程の階段を上がり屋上に出られる。
また、健が居る廊下は一直線で両サイドにエレベーターと階段があり、その片側に屋上への扉が存在していた。
けれど、見渡しがよく人が来たらどちらも直ぐにわかる。
『あれ、どうしたの』
現に、扉の近くのエレベーターから現れた友人・・・野中優に声を掛けた。
「あら、健ちゃんに祐。どうした?」
「呼び出し、鏡教授から」
優の言葉に隣の祐が答えた。
それを聞いた優は顔を渋い顔をする。そして一言、
「ご愁傷様」
と俺等に向けて手を合わせた。
そんな彼の言葉に苦笑する俺等。鏡教授には悪い(ともあんまり感じないが)と思いながらも言い返すことが出来ない。
『優は?』
「オレも呼び出し」
そう言って優は屋上の扉を指差す。
「屋上に呼び出しなんて、愛の告白でもされるんじゃない」
祐がからかうように言うと、優は思い切り顔をシカメた。
「ばーか、相手は男だ」
「今の時代わからないよ」
祐はニタニタしながら笑う。
合わせるように俺も笑うと、
「ばーか、ばーか」
と子供のように優は悪態をついた。
「馬鹿な奴の相手しても仕方ないから、そろそろ行くよ」
「あぁ」
『終わったら一緒に晩飯食わない?』
「いいよ」
片手を上げて了解すると、優は屋上に出る片扉を開けた。
「後でね」
手を振り返す俺に扉が閉まる音が響く。
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