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それから少し経った時だった。勢いよく屋上への扉が開けられる。
「二人とも大変だ!?」
あまりの勢いに健と祐が驚いて視線を向けると、少し前に話していた優の慌てた姿がそこにあった。
鬼気迫る優の姿に、健は何と声を掛けていいのかわからない。
そんな健の代わりに祐が聞く。
「どうした?」
祐の言葉に優が答えた。
「流が死んでる・・・」
「・・・・・」
『・・・・・』
優は何を言ったんだろう。
非日常の言葉に言葉を失う。
優の達の悪い悪戯にしか思えなかった。
だから、
『優、達が悪いよそういうの』
と俺は言ってしまった。
すると、優は声を強める。
「バカが、こんな事嘘で言えるか」
それはまるで悲鳴だった。
ただ事ではないことに気づき、俺と祐は優の元へ急いだ。
扉に駆け寄ると、優は扉を押さえ階段を指差して俺と祐を促し屋上の階段を先に駆け上がらせる。
階段を上がり終え、屋上を見ると真ん中に顔を地面に貼り付けるように倒れる男の姿が1つあった。
「あれだよ」
最後に上がってきた優がそう答えると、祐がゆっくりと近づく。
『寝てるだけじゃないのか』
その場を動けない健は希望的予想を口にするが、それは儚く散った。
「脈がない」
男の首もとを確認した祐は首を横に振り、俺と優に言った。
『マジかよ』
達の悪い冗談。
そんな考えばかりが浮かび、現実を受け入れられずにいると祐が腰を上げて健と優に言った。
「優、携帯で救急車。健ちゃんは誰か先生連れて来て」
「あぁ!?」
『わかった』
祐の言葉に優は携帯を取り出し、俺は弾かれた様に屋上を出ていく。
階段を駆け下りて扉を通り過ぎる際に扉を丁度開けた裏側になる箇所に鮮やかなハンカチが目についた。
俺は気になって一度足を止めるが、それ所ではないと後にする。
そして、扉を引いて開けて走ろうとすると、
「あれ健ちゃん、どうしたの?」
驚いた顔をした琴、・・・優の彼女と鏡教授が立っていた。
『あぁ、琴ちゃん』
こんなにも早く人を見つけるとは思わなかったから、言葉に困る。
「慌てているようだが、どうしたんだ?」
変人だが、美しい教授の無表情で聞いた言葉は天からの助けに思えた。
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