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返事ではなく、宍戸が特訓の事実を知っている理由を考えるオレに、
「…聞いているんだ。いい加減答えないか」
不機嫌な顔で、答えを促す宍戸。
どう答えるべきか、心中で慌てふためいたのも数秒。
「…お前には関係ねーだろ」
「…そうか」
突き放すようなオレのセリフに、宍戸もドライアイスのような視線を向けてくる。
しばらく続いた対峙は、
「どきなさい」
冷たい命令で終わった。当然の流れで、オレと宍戸の視線は、そっちに向く。
豪奢な金髪に、スラリと長い足。鮮やかな緑の瞳は、鋭く、機嫌の悪そうな視線を放っている。
不快感を隠そうともしない顔は、100人中99人は振り向くであろう、完璧な美貌だ。
非の打ち所が無い…外見だけ見れば。
「聞こえなかった? さっさとどけって言ってんのよ。邪魔くさいわね。消えてくれない?」
矢継ぎ早に宍戸を罵倒するこいつ…。誰なのかは、もう分かっていただけただろう。
ユーリだ。
「言われなくても、邪魔者は消えるよ」
素っ気なく言い残し、宍戸は玄関を後にした。
…一瞬ではあるが、ヤツに同情しちまったぜ…。
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