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宍戸の姿が見えなくなった直後、ユーリがずいっと近づいてくる。
「な、何だよ?」
一応言っておく。オレは親父に似て、女子への耐性が低い。
「何吹き込まれたのよ?」
「吹き込まれたって…別に何も」
「じゃあ何を話してたのよ?」
「そんなモン、お前に教えることじゃねーだろ」
「………」
不満げなユーリは、たっぷり十秒、じとっとした目でオレの顔を睨んでいたが、
「…ま、いいわ」
素っ気なく言って、自分の下駄箱に手を伸ばした。
色々なことをしつこく聞いて、大丈夫だと分かったら、あっさり退く。
これがこいつなりの気遣いなのだ。たぶん。
上履きを履いたユーリは、
「で? 二日連続で放課後の準備サボって、どこで油売ってたのよ?」
「何も売ってねーよ」
返事したオレは、ここ数日の経緯を、かいつまんで教えてやる。
おもしろがって周りに言いふらすほど、ユーリはバカじゃない。話しても平気だろう。
「ふ~ん…」
ユーリの口調は軽いが、目は真剣だ。
「結局、準備サボって、別の用に必死だったんじゃない」
…言葉の内容は、けっこう厳しいが。
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