2.手を出すな

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宍戸の姿が見えなくなった直後、ユーリがずいっと近づいてくる。 「な、何だよ?」 一応言っておく。オレは親父に似て、女子への耐性が低い。 「何吹き込まれたのよ?」 「吹き込まれたって…別に何も」 「じゃあ何を話してたのよ?」 「そんなモン、お前に教えることじゃねーだろ」 「………」 不満げなユーリは、たっぷり十秒、じとっとした目でオレの顔を睨んでいたが、 「…ま、いいわ」 素っ気なく言って、自分の下駄箱に手を伸ばした。 色々なことをしつこく聞いて、大丈夫だと分かったら、あっさり退く。 これがこいつなりの気遣いなのだ。たぶん。 上履きを履いたユーリは、 「で? 二日連続で放課後の準備サボって、どこで油売ってたのよ?」 「何も売ってねーよ」 返事したオレは、ここ数日の経緯を、かいつまんで教えてやる。 おもしろがって周りに言いふらすほど、ユーリはバカじゃない。話しても平気だろう。 「ふ~ん…」 ユーリの口調は軽いが、目は真剣だ。 「結局、準備サボって、別の用に必死だったんじゃない」 …言葉の内容は、けっこう厳しいが。
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