Waltz=Ⅰ

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【Ⅷ】 「なあ、知ってるか?」 何の突拍子もなく、朝の訓練を終え、自由な時間を与えられた今、静かに空を眺めていた俺に、奇妙な笑みを向ける男。 知ってるか、と言われても、何を、を言わなければ判る筈もない。 脈絡の無い会話に、俺はただ首を傾げた。 「最近よぉ、消えるんだと」 『…何が』 「人間さ」 『?』 勿体ぶるような、俺が首を傾げる様が面白いような、男は更に笑みを深めて俺を見る。 「人間が、消えるんだ。何の前触れも無く」 神隠しだ、と男は言った。 眉をしかめた俺を見て、エヴァには言っても仕方がないか、と溜め息をついて、恐らく他にも言い触らすのだろう、話し込んでいる集団へと男は向かった。 (…くだらない) 大した娯楽も無く、ただ己の肉体を強化する場所だからこそ、偶に舞い込む信憑性の欠片もない話題に飛びつくのだろうが。 一体どこで聞いたのか。 いや、もしかしたら、ただの暇つぶしで誰かが勝手に言い触らしたのかもしれない。 そう言う連中に限って、その話の内容よりも、そこから想像し、騒ぎ笑い合う事の方が主な目的。 話題なんて何でも良い。 ただ、馬鹿騒ぎする元が欲しいだけ。 くだらない。 くだらない。 目で見ぬものを真実とし、見ている筈のものを偽りだと否定する。 何の為の眼だ。 何の為の脳だ。 (愚か…) それにすら、気付いていない。 <何れ気付く> <全てが手遅れの時に> †
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