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【Ⅰ】
ぐしゃり。
決して硬くは無い固体が潰れる音。
耳に響くそれは、何だったか。
「ロダが殺られたぞ!」
「畜生…、あいつ等…!」
あぁ、そうか。
人間が潰れる音。
吹き荒れる風と沢山の発砲音、金属のぶつかる音が絶えず鳴り響いているのに、人間がその生を失う瞬間は、その音だけが響いて、周りは無音になる。
そしてその数秒後に、生き残った仲間が死んだ人間の名を叫び、眼を鋭くさせて敵を同じ目にあわせてやろうと突き進む。
戦場では決して珍しくないその光景に、俺はただ言われた通り動くだけ。
周りは皆、狂った死神。
手に持った残酷な凶器で、相手の心臓をかっ喰らう。
荒れる大地に撒かれる血。
止まった死体は、肉食動物の餌。
狂った時間、狂った踊り、狂った世界。
<でも一番狂っているのは>
<他でも無い、人間>
†
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