Waltz=Ⅰ

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【Ⅱ】 《今夜は双方分が悪い。後日に持ち越しだ、全隊撤退しろ》 耳に付けた小型の無線機(と言っても、大元、司令部の一方通行)から流れる低い声に、俺や、俺の周りの人間は、同じ様に武器を僅かに下げた。 大地に降り注ぐのは人間の血だけではなく、寧ろその汚れを落とすように降り始めた大粒の雨。 多少のそれならこんな命令はこなかっただろうが、最早嵐の寸前。 元々風も強かったのだが、遂に、と言う感じだ。 「撤退だってよ」 『…聞えてた』 「今日は無駄足だったな」 偶々近くに居た同隊の男の言葉に一言で返すと、そいつは肩を竦めた。 無駄足。 それが一体何を意味するのか。 (今日死んだ人間に、価値は無い、ってことだ) 勝ちも負けも無い。 負けたらそれこそ生きてても死んでても罵声を浴びせられるが、きっと、引き分けの戦場で死んだ人間は、記憶にも残らない。 戦場で死んだ仲間の敵討ちの様な台詞を吐いて突っ込んで行った奴は、ただ敵をぐちゃぐちゃにする口実が欲しいだけ。 あいつの為。 仲間の為。 ただ聞こえが良いその為だけに、俺たちは命を奪い合う。 黒と赤が混ざり合って濁ったこの空の下。 人間は、只管に大地を汚す。 <それが人間> <それが本能> †
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