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【Ⅲ】
撤退命令、と言っても、本基地に近い場所を戦場にする筈も無く、本基地から一定の距離を保って設けられた軍事施設へと向かう。
移動は専ら歩きか車。
基本、早いと言う理由で車が主だが、今回の様に人数が多いと、それだけの数の車を用意することなど出来ない。
よって今現在、隊列で撤退、と言う訳では無く、予め決められた小隊でそれぞれのルートで撤退している。
(…視界が)
激しすぎる雨脚に、満足に速さも出せない。
敵の追尾を避けるためにしていることも、正直これでは意味が無い。
条件は敵も同じだろうが。
生憎ゴーグルなんて持っている訳が無く、顔面に降り注ぐ雨で目も開けてられやしない。
『まるで、天刑』
俺に。
俺たちに。
人間に。
汚すことしか出来ない人間が、滑稽なのだろうか。
憎いのだろうか。
悲しいのだろうか。
天の神。
お前は泣くのか。
お前は笑うのか。
お前は憎むのか。
お前は嗤うのか。
俺を、俺たちを、人間を。
だが神よ、忘れるな。
<お前が人間を造った>
<人間は、お前自身>
†
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