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【Ⅳ】
ずぶ濡れの身体を温める為に、自分の名とナンバーを報告し生存確認を終えると、俺は他の奴等に続いて自室へと向かった。
軍事施設は本基地では無いとは言え、無駄にでかいし、隊員それぞれの個室がある。
決して広くはないが、独りの空間を求める人間にとっては丁度良いもの。
(…血が、)
冷え切った身体をシャワーで温めてから、腕に走るぴりりとした痛み。
あぁ、そう言えば敵の一人と対峙した時、剣先が掠ったんだったか。
雨と寒さですっかり忘れていた。
もっとも、治療してもらう程でも無い。
これくらいならば、放っておいても問題無いだろう。
(怪我なんて、日常茶飯事)
腕の傷跡も。
背中の傷跡も。
足の傷跡も。
まだ拷問を受けていないだけましな身体。
それでも増える。
きっと、もう傷跡が無い場所なんて無いくらいに。
<消えない傷跡>
<俺の、罪>
†
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