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【Ⅵ】
何時もなら小さな窓から入り込む月光も無く、広がる暗闇から聞えるのは、雨音。
雨音と言ってもそんなに可愛らしい物でもなく、まるでこの施設を飲み込もうとしているかのようにざぁざぁと降り落ちる。
今夜は、どうやって過ごそうか。
戦場に出た夜は、決まって眠気など少したりとも無い。
翌日の訓練には支障は無いが、長い暗闇にじっと耐えるのは、それなりの気力がいる。
(命、か)
それは人間に一つずつ。
俺にも一つ。
いや、人間だけじゃない。
生きるもの全てに命はある。
簡単に潰せてしまう蟻でも。
食料となる植物でも。
俺は、沢山の命を喰らって生きている。
動物も、植物も、人間も。
そうやって多くの命を代償にして生きる俺に、一体どんな価値があるのだろうか。
(出来るなら、その答えにたどり着く前に死にたい)
きっと、悲しくなる。
きっと、嬉しくなる。
狂うように踊って、そして、動かなくなる。
<死にたがりアディクト>
<どうか、俺を>
†
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