一 目が覚めたとき、俺の

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 俺の口は話をしたがったがなんとか押さえ込んだ。  俺は返事を保留するように若い刑事の顔をぼんやりと見た。 「崎田は死んだ。武田君は何も怖がらなくていい。我々は夏合宿中に何があったのかを知りたいんだ」  崎田が死んだ?  あんた何バカな事をいっているんだ。  崎田にとって、肉体なんてたいした意味を持たない。  あんた崎田を知らないな。 「参加した十二人のうち、生き残ったのは生ゴミと一緒に捨てられた君だけだ。そもそもミランダ研究会というのは、何なんだ?全国津々浦々の大学に支部があり、超能力班や瞑想班、占い班等々細かな班に分かれている。ぜひ教えてほしい」  崎田の気配は感じない。  たぶん俺がミランダ研究会に関して何かを話したら、崎田は感じ取って有形であれ無形であれ、奴なら傍まで来るだろう。  若い刑事が口の臭いが分かるまで顔を俺に近づける。  歯ぐらいちゃんと磨けよ。 「武田君。怖がる必要は一切ない。君の身柄や生命は我々が保証する。二十四時間警備だ」  信用出来るかよ。  どうせ俺が口を割った時点で、俺の命なんて屁とも思ってないんだろう? 「なんだか不信感が積み重なった目をしてるね。返事くらいしてくれてもいいんじゃないか?」  目で返事してるじゃねえか。  年寄りの癖してこんなことも分からねえのか。
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