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俺の頭の中で年寄り刑事の言葉が反芻された。
ミランダ研究会に関わらずに、普通に暮らすだと?
そりゃ可能世界のどこかには、俺が普通に暮らす世界もあるだろう。
だけど今の俺は肉塊になりベッドに横たわるだけだ。
「黙ってないで、そろそろ話してくれないか?ミランダ研究会の夏合宿で何があったんだ?」
あった。
方法が一つあった。
崎田だ。
確か奴は自由に肉体から離脱して、多重世界を行き来していたはずだ。
「まだ自分の立場が分かってないのか!お前なんざ証言しなければ虫けら程の価値もないんだよ!」
若い刑事さん、俺を怒鳴るなよ。
今俺は革新的なアイディアに喜びを覚えてるんだ。
他の多重世界に住む健康な俺の体を、スカッと乗っ取ればいいんじゃねえか。
こんな芋虫みたいな体に用はない。
「自分の立場は分かってます。今から証言します」
崎田を呼ぼう。
ミランダ研究会の秘密をバラすフリをすればきっと奴は現れる。
今奴はたぶん肉体から離脱した状態だから、きっと俺を肉体から剥がすだろう。
それからがチャンスタイム!
肉体から離脱したら、奴が何かする前に逃げてやる。
「やっと我々の意見を聞き入れてくれたみたいだな。では質問しよう。まず、武田君がミランダ研究会に入ったきっかけは?」
若い刑事がレコーダーのスイッチを押すのが見えた。
俺の声を録音したいのかよ。
裁判の証拠にでもすんのか?
ていうか、俺が本当の事をいうと思ってるのか?
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