一 目が覚めたとき、俺の

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「入学式のあとサークル勧誘されました。女の子が沢山いるよ、とか、色々活動して楽しいよ、とかいわれまして」  本当は違う。  入学式当日、崎田は新入生の俺たちの目の前で校舎の壁を通り抜けた。  奴は俺たちにこう呟いた。 『これが人類の最終進化形、超能力者だ。お前たち、この能力を欲しくはないか?』  俺たちは先を争ってミランダ研究会に入会した。  こんな能力があれば人生楽勝だ、と思ったからだ。 「よくあるカルト組織の勧誘手法だな。カルトであることを隠して、楽しいよ、異性と出会えるよ、と誘うんだ。で、そのあとはどうなった」 「最初の一ヶ月ほどは本当に楽しかったんですよ。居酒屋で宴会したりボーリング行ったり何人かで先輩から車を借りて海に行ったり。まだ春だったから泳げなかったけど、楽しかった」  俺たちはミランダ研究会の学生自治会館五階の部室に連れられた。  早速俺たち新入会員は財布から五円玉を出して紐を通して結び、二十センチメートルほど五円玉をぶら下げて精神を集中させていた。  五円玉が前後に動くとか回転するとかイメージすると、本当にイメージ通りに五円玉は動いた。 『それは超能力ではない。紐を持つ腕が意識しない間に動いただけで、無意識下の反応を知るための訓練だ。今にこの訓練の理由が分かる』  崎田は後ろで手を組みゆっくりと歩き、一人一人に穏やかな微笑みを見せた。
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