目撃者ゼロ

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  「川瀬は一緒じゃないんですか?」 「岩城と、勝手に聞き込みに向かいやがった。そんなことは、どうでもいいから早く車をまわして来い」 「は、はい!」  西村に睨まれ、大塚は慌てて駆け出した。横に並ぶと、西村が声を掛けてくる。 「テープは持ったのか?」  大塚は、手ぶらの自分に気付き慌てて謝りながら、駅管理室に向かって戻っていった。  その背を眺め西村は煙草を取り出した。しかし、辺りにはこれでもかというほど、路上禁煙区域のマークがあちこちに見える。  西村は仕方なさそうに、煙草をしまった。  こじんまりとした捜査会議室に設置されたモニターで、大塚が目をこらし借りてきた駅の監視カメラの映像をチェックしている。  西村は窓を全開にして、ゆっくりと煙草を吸っていた。 「どうだ、見つかったか?」 「急かさないでくださいよ。今、探していますから…それにしても大胆な犯人ですよね。あんな昼間の電車の中で犯行を行うなんて余程逃げ切れる自信があったんでしょうか。それともはじめから逃げる必要がなかったとか……」 「逃げる必要が無い犯人か」  西村はしばらく口を硬く閉じ、二本目の煙草に火をつけた。ゆっくりと深くはかれた煙が細くたなびく。  大塚もモニターに集中し、部屋は静かになる。テープを出し入れしたり操作している音がやけに大きく聞こえる。 「どうだ、仕事には慣れたか?」 「そうですね……なんとなくですけど、流れは掴めた感じがします。あぁ、でも申請書類とか不安ですね。書き方とか提出部署とか、覚えきれないんですよ。どうも、苦手みたいで岩城さんにいつも怒られていますよ」
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