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ガランとした昼下がりの電車の中。
瀬田要はその電車の中にいた。
カジュアルなジャケットを羽織、大きめの鞄を膝に乗せている。今から授業を受けに行く大学生といった感じだ。
妙に周りの光が明るく、車内が白く飛んで見える。
要の周りでは自分勝手な人々の携帯電話や大声の会話、イヤホンから漏れる音楽。さまざまな不協和音が流れていた。
「神様…」
それは、囁きというより切なる祈り。
全てが電車の騒音に混ざり、のまれていく……
要は深く息を吸い、決心を固めると導きに逆らうことなく鞄に手を入れた。
引き出された要の手には、銀色の拳銃。
後は無表情のままに、引き金を引くだけ。
奥の座席から床にかけて、車両の一帯を占拠していた女子高生の一人が倒れた。
あまりに突然のことで、乗客たちは声を上げることすら出来ない。
要は脅える女子高生達をただの的のように、淡々と撃ち殺していく。
気がつくと銃弾が切れ、拳銃は空の音を立てていた。要は不器用な手つきで銃弾を補充すると、再び構えた。
まだ、息のあった女子高生の額に銃口をつきつける。彼女の口がタスケテと動いた。
要は引き金を引いた……
× × ×
八本の引込み線が並ぶ一つに、電車は止まっている。
その横を何も知らない急行電車が通り抜けていく。
先ほどから忙しそうに警察官達が、車両から出たり入ったりしている。
その物々しい雰囲気に、駅のホームからも近隣の道路からも好奇の目達が観察していた。
電車の車両から青いビニールシートに厳重に包まれた遺体が運び出されていく。
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