目撃者ゼロ

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 電車の脇には乗客達が集められ、事情徴収を受けていた。  あまりに衝撃的だったのか、乗客達は一様に怯え硬い表情を浮かべていた。中には恐怖で泣いているものもいた。  岩城が出来るだけ彼らを気遣いながら聞き込みを続けていると、青い顔の川瀬が合流してきた。 「大丈夫か新人?」  川瀬は無言で首を横に振った。 「西村さんが、邪魔だから外に行けって……」  そう言いながら、吐き気を抑えるように川瀬は口を手で塞いだ。  電車の車内は異質な光景が広がっていた。  端の一角が真っ赤に染まっている。  ブランドの鞄が転がり、床には血溜まりが広がり、大量の銃痕がドアや窓に生々しさを刻んでいた。  その現場を機械的に、鑑識班が記録していく。  西村は電車に乗り込むなり、漂う異臭と現場の光景に顔をしかめた。後から続いて入ってきた大塚は臭いにたまらず、口元をハンカチで押さえる程だ。 「酷いな…変質者のたぐいか…目撃者はいるのか?」 「今、岩城と川瀬が確認しています。ただ現場に居合わせた乗客は殆どあの駅で逃げたようです」 「そうか……大塚、ここはいいから駅の方の証言を集めてきてくれ」 「はい」  大塚はその場から逃げるように、駆け足で電車を降りていく。  西村はもう一度現場を見つめ、その凄惨さにさらに眉間の皺を深くした。  西村が電車から降りてくると、既に辺りには乗客の姿は無く部下の川瀬と岩城が困ったように小声で話し合っている。
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