目撃者ゼロ

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「でも、あんな風にいきなり怒鳴られるとムカつきません?」  川瀬は、ちらりと岩城を見た。 「聞き流すんだよ。あれはあの人の性分なんだから。俺達が諦め、耐えるしかないんだ」 「頭では分かっているんですけどね……」  二人は小さく溜息をつき、顔を見合わせ、苦笑した。  その二人のやりとりが聴こえたかのように、西村は渋面で彼らの姿を眺めていた。  煙草をいつものように踏み消し、思い出したように携帯灰皿を取り出す。  歳を感じさせるような、疲れた表情を浮かべ、西村は駅に向かって歩き出した。  駅は乗換えを急ぐ乗客と野次馬が入り乱れていた。  警官達は乗客に睨まれる中、証拠品を探し必死に這いずり回りどこか哀れな光景にさえ見える。  西村はその中から、ゴミ箱を調べている部下の大塚を見つけ歩み寄った。 「おい大塚、何か見つかったか?」 「いいえ。物証も証言もさっぱりです」 「また、目撃者がいないっていうのか!」 「またって、乗客からも目撃情報がとれなかったんですか?」 「あぁ。しかもあいつが、居たとしても証言する者はいないっていいやがる」 「はぁ、川瀬らしいですね。駅員の話によりますと容疑者と思われる者が、この駅で降りたのは間違いありません。念のため凶器が捨てられていないか近隣を捜索しておりますが、見つかる可能性は低いと思われます。後、駅構内の監視カメラの映像を証拠品として手配してあります」 「そうか。凶器の捜索は鑑識班にまかせて、先にテープを確認するぞ。署に戻る。車をまわしてくれ」
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