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頭を押さえながら、僕はゆっくりと記憶の糸を手繰り寄せた。
ああ、そうだ。僕はあの後・・・。
「・・・っ!マオ!!」
一瞬にして、意識が覚醒する。
「そうだ、こんなことしてる場合じゃ・・・。あの子を助けないと」
「・・・あなたの召喚獣ですか?」
セアラと名乗った女性が、遠慮がちに訊く。
はい、と答えようとして、どうしてそれを、という疑問にすり代わった。
彼女は僕の思考を察してくれたかのように、言葉を続ける。
「私達も同じなんですよ。捕まってここに連れて来られて・・・その時に、召喚獣も取られてしまいまし た」
「そういえば、ここは・・・。牢のようですが・・・?」
周囲を見渡すと、壁と床は敷き詰められた石でできていて、調度品などは何もない。
鉄格子こそ嵌っていないが、大人の頭ひとつがやっと出る程度しかない、明かり取りの窓が付いている。
木でできた扉は簡素なものであったが、見るからに怪しそうな文様が浮かび上がっていて、触る気力を無くさせていた。
周囲がまだ、十分な明るさがあることから、今が夜ではないこと、この部屋が地下室ではないことが推測される。
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