救いの手

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僕達3人は順番に連れ出されて、何処かへと先導されていった。 たぶん「取調べ」というやつだろう。 ご丁寧に、魔法が使えないよう、呪が施された手枷を着けられて。 両腕を拘束される形ではなく、左右に1つずつ、腕輪のようになっているのは、物理的な攻撃力が無 いに等しい魔術師用だからなのだろう。 だが、効果はてきめんらしかった。 ダメ元で何度も魔法を使おうとしてみたが、マナが霧散してしまって形を成さない。 おかげで、どんなに精神を集中しても、マオとコンタクトが取れない有様だ。 ちなみに、さっきまでいた牢屋でも、扉の文様が同様の働きをしていたらしい。 「僕の召喚獣はどうしてる。無事なんだろうね」 前を行く、口髭鎧の男の背中を睨みながら尋ねる。 僕達は、螺旋になった塔の階段を、1列に並んで降りていた。 突き落としてやったら、どんなにスッキリすることだろうか。 男は振り返りもしないで、横柄に鼻を鳴らす。 「お前達は全員同じことを訊くな。そんなに猫が心配か」 「当たり前だろう。あの子達は定期的にクリスタルを与えないと、マナが枯渇してしまうんだ。そうなったら、現世で形を保てなくなって消えてしまう・・・」 「所詮、使い魔だろうが。使いつぶしたら、また新しいのを呼べばいいだけの話じゃないのか?」 「替えの利く道具みたいに言うな!」 この世界にたった一人。 どんなにちっぽけでも、自分という存在が、世界で一人しかいないように。 召喚獣もまた、無限の魔法界の中から、たった一匹が選ばれる。 召喚師は、異界のマナの海に精神を飛ばし、呼びかける。 召喚獣は、その声を聞き届け、応えてくれる。 誰でもいいわけじゃない。誰にでも声が届くわけじゃない。 近しい魂、響きあう精神、通じる心。 砂漠の砂粒を拾うような確率で、お互いは出会う。 呼び出された無垢な魂は、名前と糧を与えられ、現世に形を成す。 召喚者は彼らを使役する権利を得る代わりに、責任と最低限の敬意と愛情を持って接する。 名前は再会の約束。 以後は、ずっと、その個体を召喚することになる。 それが契約と呼ばれるもの。
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