救いの手

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「おっけえ、おっけえ。おーい、あっちゃーん!救出成功だよ~~!」 闇の中で、若い女の子の声を聞いた。 「『あっちゃん』は~やめて下さい盟主~」 若い男の声は、遠くから聞こえる。 いつの間にか目を閉じていたらしい。 僕はおそるおそる、両目を開いた。 「よっしゃあ、若者っ!どこで降りたいかね?」 オレンジの髪をツインテールに結った、小さな女の子の顔がそこにある。 彼女は僕と目が合うと、白い歯を見せてニカリと笑った。 どう見ても相手の方が年下なのに若者呼ばわりか、と思ったが、多分見た目だけなのだろう。 ドワーフの女性というのは、幼く見えるから。 「え、ええと・・・」 「状況が把握できてないみたいだから、説明っ。 アタシはマーナ。エリュシオン同盟の盟主。ここの要塞の奴等とは血盟戦中。 んで、アスタユルはうちの血盟員。なんかいちゃもん付けられて連れてかれたって聞いて、助けに来た。 アンタはそのついで。以上!」 「は、はぁ・・・それはどうも・・・」 「んー?元気ないぞ?どっか痛くしたか?」 「い、いえ、大丈夫です・・・多分ですけど」 一歩間違えれば死んでいたかもとは、言えない僕だった。 「じゃ、もっと元気出せ!アタシのCGゴーレムに乗れるなんて、そうそうないんだぞっ」 「え。しーじー・・・ごーれむ・・・」 思わず下を見る。 そして、激しく後悔した。 地面が遠い。 高所恐怖症ではないが、あまりの高さに目が回る。 慌てて、胴体を握る巨大な拳に、両手でしがみついた。 噂に名高い石の巨人。 ドワーフ達の生ける芸術品。 精巧に組み立てられた石のレンガが、鋼鉄のように磨き上げられて、美しい光沢を放っている。 ・・・らしいのだが。 せっかくだが、悠長に眺めていられる精神的余裕はなかった。
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